診療実績・臨床指標
診療実績
臨床指標
【入院患者の転倒転落発生率<医療安全>】
入院患者全体のうち、医療安全管理室に転倒転落の報告がされた件数の割合を示しています。
入院中は、ベッド周辺、歩行途中、トイレの際など思わぬところで転倒転落が起こりえます。転倒転落によって骨折などが生じた場合は患者さんのQOL(生活の質)の低下をきたし、在院日数の長期化にもつながります。発生原因としては、入院という環境の変化や疾患そのもの、また治療・手術になどによる身体的なものなど、さまざまなリスク要因があります。患者さんの転倒転落を完全に防ぐことは困難ですが、その発生を可能な限り防ぐために、医療スタッフはリスク要因をしっかり把握し全力で予防に取り組む必要があります。
(値の解釈)
より低い値が望ましい
(指標の計算方法)
分子:インシデント・アクシデントレポートが提出された入院中の転倒・転落件数×1000
分母:延べ入院患者数
※‰(パーミル)は、入院患者1000人あたりの件数を表しています
2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | |
入院延べ患者人数 (分母b) |
101,542 | 103,137 | 103,152 |
転倒転落件数 (分子a) |
273 | 320 | 357 |
転倒転落発生率 (‰ パーミル) |
2.69 | 3.10 | 3.46 |

(医療安全管理室)
【入院患者MRSAおよびESBL新規発生率<感染制御>】
耐性菌や院内感染拡大しやすい重要な微生物に対する発生状況を監視し、各部署への感染対策実施状況の確認や見直し、アウトブレイクの早期発見・早期対応に役立てます。
(指標の計算方法)
MRSA・ESBL新規発生率
分子:入院患者MRSA・ESBL新規検出件数×1000
分母:延べ入院患者数

【結果】
当院の入院患者でMRSA新規検出件数は昨年度よりやや上昇を認め、ESBL新規検出件数は減少を認めました。アウトブレイクすることはなく経過しています。持ち込み事例も含まれており0(ゼロ)には出来ていませんが、より低い水準を維持する為手指消毒剤の使用量の向上に取り組んでいます。日々の感染対策を継続していきます。
【中心静脈カテーテル関連血流感染(CLABSI)感染率及び使用比<感染制御>】
中心静脈カテーテルは、心臓に近い大きな静脈血管へカテーテルを挿入し、高カロリーな点滴製剤や特殊な点滴製剤などを安定して投与できます。しかし、カテーテルは身体にとっては異物であり、使用することで感染のリスクとなります。感染率などを明確にし、感染防止のための皮膚消毒や輸液操作の感染防止技術を評価・改善、そして感染率の低下を目標に努めます。
(指標の計算方法)
感染率(1000カテーテル使用日)<1000日間カテーテルを使用するとどの程度感染が起こるか>
分子:中心静脈カテーテル関連血流感染件数×1000
分母:延べ中心静脈カテーテル使用患者数
使用比<中心静脈カテーテルがどの程度使用されているか 1に近づけば感染リスクが高くなる>
分子:延べ中心静脈カテーテル使用患者数
分母:延べ入院患者数

当院は、ハイリスク・ハイコスト・ハイボリュームを考え消化器肝臓病センターおよびICUで実施しております。平成27年度のICUは感染件数「0(ゼロ)」件でした。消化器肝臓病センターも感染率の低下を認めています。今後は感染事例0件の維持及び使用比の低下を目指します。
【尿道留置カテーテル関連尿路感染 感染率及び使用比<感染制御>】
尿道カテーテルは、自分で排泄が困難な状況の場合や全身管理において正確な尿量測定が必要な場合、周術期管理の場合など必要な時に尿道へ留置するカテーテルです。長期使用すればするほど感染のリスクは高くなり、日々尿道カテーテルを使用する必要性の検討や、挿入時やカテーテル使用中の感染対策が重要とされています。
(指標の計算方法)
感染率(1000カテーテル使用日)<1000日間カテーテルを使用するとどの程度感染が起こるか>
分子:尿道カテーテル関連尿路感染件数×1000
分母:延べ尿道カテーテル使用患者数
使用比<尿道カテーテルがどの程度使用されているか 1に近づけば感染リスクが高くなる>
分子:延べ尿道カテーテルカテーテル使用患者数
分母:延べ入院患者数

当院は尿道カテーテル長期使用患者が多い脳・神経センターでの感染率を評価しています。全米院内サーベイランス(NHSN)や日本感染環境学会のデータと比較すると使用比は低く、必要最低限の患者に使用されていると考えられます。感染率は減少傾向にあり、今後さらなる感染率低下を目指して早期抜去に努めています。
【人工呼吸器関連肺炎(VAP)感染率及び使用比<感染制御>】
肺炎は、院内感染のうち2番目に頻度の高い感染症であり、肺炎を契機に他の合併症や死亡と関連しているといわれている感染症です。器械により補助される換気管理(人工呼吸器管理)を行っている患者は、院内肺炎を起こすリスクが高いといわれています。院内肺炎防止に向けて、人工呼吸器関連肺炎サーベイランスを実施することは、感染対策において強く推奨されています。
(指標の計算方法)
感染率(1000人工呼吸器使用日)<1000日間人工呼吸器を使用するとどの程度感染が起こるか>
分子:人工呼吸器関連肺炎件数×1000
分母:延べ人工呼吸器使用患者数
使用比<人工呼吸器がどの程度使用されているか 1に近づけば感染リスクが高くなる>
分子:延べ人工呼吸器使用患者数
分母:延べ入院患者数

当院は、人工呼吸器の使用頻度が多く感染のリスクが高いICUで、VAPサーベイランスを実施しています。感染率は、年度間で明らかに低下しています。CDC(アメリカ疾病管理予防センター)ガイドラインや、日本集中治療医学会で報告されている感染防止対策を取り入れ、実施していることが人工呼吸器関連感染防止技術の向上につながり、効果として現れていると考えられます。日本環境感染学会のデータと比較すると、感染率はほぼ中央値となっています。使用比はやや高めですので今後、感染リスクを下げるために早期抜管も含めた評価、対策を日々行っています。
(感染制御室)
【消化器外科手術部位感染(SSI)感染率<感染制御>】
全米院内サーベイランス(NHSN)で報告されているデータでは、手術部位感染は医療関連感染のうち3番目に多く、入院患者におけるすべての病院感染の14~16%を占めているといわれています。手術部位感染は重症化や死亡につながるリスクが高く、感染予防が重要だと考えられます。各施設データを外科医と共有し、戦略的に感染率を低下させる対策に役立てています。
(指標の計算方法)
SSI感染率
分子:感染件数×100
分母:手術件数
※SIRとは:標準化感染比のことを示し、NHSNのデータを標準に考えると自施設のSSIがどの程度多く発症しているのか数値化したもの


【結果】
当院は、感染リスクが高い消化器外科でサーベイランスを実施しています。全体の感染率は5.7%で、厚生労働省が実施しているサーベイランスシステムのデータと比較すると、中央値よりも低い値を示しています。手技別でも、胃や直腸、胆のう手術では感染率が中央値より低くなっています。これは、CDC(アメリカ疾病管理予防センター)ガイドラインで報告されている手術部位感染防止対策を取り入れ実践していることが効果として現れていると考えられます。さらに自施設の状況に合わせた対策に取り組むことで、今後感染率の低下を目指します。
(感染制御室)
【褥瘡有病率・褥瘡推定発生率<褥瘡対策>】
褥瘡対策委員会 臨床指標(平成 30年度)
当院値の定義・算出方法:

院内褥瘡対策の現状:
入院時及びADLの変化等に応じ、必要時に病棟褥瘡専任看護師が中心となり褥瘡危険因子のリスク評価及び体圧分散寝具選択等を行い、NSTチームと協働し早期の褥瘡治癒を目指した活動を行っております。
今年度よりは、褥瘡で外来通院されている患者様を対象にリハビリテーション室でシーティング外来も開始し、地域の施設や在宅医療機関と連携し褥瘡予防・治療ケアを行っております(資料 1)。

<資料1市立奈良病院 褥瘡有病率、推定発生率年間推移>
今年度の褥瘡推定発生状況はd1・d2 で84%を占め、褥瘡の早期発見d3以上の悪化に至らないようケアが行えていると考えております(資料 2)。

<資料2 院内発生褥瘡深達度別分布>
院内スキン-テアの状況:
今年10月より集計を開始し、院内のスキン-テア予防・再発予防ケアに取り組み始めました(資料 3)。

<資料3 スキン-テア発生状況>
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(褥瘡対策委員会) |