市立奈良病院
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肺がん

1.肺がんとは

肺がんとは肺にできる悪性の腫瘍(しゅよう)のことで、肺の気管支や肺胞の細胞などが「がん化」したものです。

肺がんはわが国におけるがんの死亡原因のトップとなっており、その数は年間6万以上にのぼります。これは「8秒に一人」の割合で日本のどこかで肺がんで亡くなられていることになります。

2.肺がんの原因

まず代表的なのは喫煙習慣です。わが国における喫煙者の肺がんリスクは男性で4.8倍、女性で3.9倍と言われています。1日当たりの喫煙するタバコの本数に喫煙している年数を掛け合わせた数字を「喫煙指数」と呼びますが、この値が600以上の人は肺がんに罹患するリスクが高いと言われています。また喫煙しない人であっても受動喫煙によって1.9倍肺がんになりやすくなるとのデータもあります。

その他の原因として、放射線物質(ラドンなど)やアスベスト、クロムなどの暴露、女性ホルモン、大気汚染、遺伝的素因などが挙げられます。

肺がんの分類

肺がんはがん細胞の大きさによってまず小細胞肺がんと非小細胞肺がんの2つに分かれます。これにより肺がんの治療方法が異なってきますので、臨床的には重要な分類です。

小細胞肺がんは比較的小型のがん細胞でできた腫瘍で、肺がんの約2割を占めます。このタイプのがんは増殖スピードが速く、全身に転移しやすく悪性度の高いがんです。一方で抗がん剤や放射線治療の感受性(効果)が高いと言われています。

非小細胞肺がんは全体の約8割を占め、さらに細胞の種類(組織型)によって腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなどに分かれます。このうちわが国で最も頻度が高いのは「腺がん」で、男性の肺がんの4割、女性の肺がんの7割を占めると言われています。非喫煙者の女性に比較的多いのが特徴です。このタイプは進行の速いものから遅いものまでさまざまあります。次に多い扁平上皮がんは、かつて「タバコ肺がん」と言われるほど喫煙と因果関係がある肺がんで、肺の根元(肺門部)に発生することが多いです。大細胞がんは未分化な細胞でできており、肺の末梢でできやすく発育が早いとされています。

4.肺がんの症状

肺がんの一般的な症状としては、1~2週間以上持続する咳(せき)、血痰(けったん)、胸痛、呼吸困難などがありますが、どれも肺がんに特有なものではありません。肺がんの進行状況にかかわらず、ほとんど無症状であることも多く、検診などでの胸部レントゲン検査やCT検査などで偶発的にみつかることも少なくありません。また一方では、転移をおこした臓器(肺、脳、骨、肝臓、副腎など)の障害が先行することもあります。症状出現時にはすでに進行していることも多く、初期で発見されるのは2~3割程度にすぎないのが実情です。

肺がんの主な治療方法

肺がんの治療方法は手術療法、化学療法、放射線療法などの中から単独もしくは組み合わせで治療を行います。治療は原則的に肺がんの拡がり(病期・ステージ)により決定されます。肺がんはⅠ期(がんが肺の中に留まっている:IA・IB)、Ⅱ期(原発巣のがんは肺内に留まっているが、同じ側の肺門リンパ節に転移がある:IIA・IIB)、Ⅲ期(原発巣のがんが肺を超えて隣の臓器に波及しているか、縦隔リンパ節に転移がある:IIIA・IIIB)およびⅣ期(肺、脳、肝臓、骨、副腎などの臓器に転移(遠隔転移)がある)に病期分類されます。小細胞肺がんでは限局型と進展型とに大別することもあります。

手術療法は主に非小細胞肺がんにおける初期段階で第1選択となります。がんの病巣をふくめた周囲の肺組織およびリンパ節を取り除くのが一般的です。最近では胸腔鏡(きょうくうきょう)を用いた手術侵襲の少ない内視鏡手術も行なわれています。

放射線療法はX線や他の高エネルギーの放射線を使ってがん細胞を殺すもので、通常、体外から肺やリンパ節に放射線を照射します。1日1回で週5回のスケジュールで照射して5~6週間ほど行います。手術ができない肺がんの局所治療に用います。

化学療法は抗がん剤を点滴または内服することでがん細胞を殺すことを目的としており、がんの全身治療になります。小細胞肺がんに対する最も一般的な治療であり、手術適応のない非小細胞肺がんにも用います。最近では遺伝子に直接作用させる分子標的薬なども登場し、治療の選択肢が増えています。

また、がんの痛みや他の苦痛に対する症状緩和を目的とした治療(緩和療法)も単独もしくは上記の治療と並行して行ないます。

非小細胞肺がんで手術を行なった場合の治療成績は、術後の5年生存率でⅠ期:80%前後、Ⅱ期:60%前後、Ⅲ期:40%前後、Ⅳ期:10%未満となります。放射線療法や化学療法ではこれより治療成績が悪くなりますが、生存期間が延長できる場合があります。

6.最後に

肺がんは、がんの中でも最も治りにくいがんの一つです。よって肺がんにならないための予防が重要で、そのためにはまずは「禁煙」が必須です。そして、緑黄食野菜や果実を摂る、適度な運動をする、ストレスをためないことなどが予防のポイントです。そして早期発見が何よりも重要で、定期的に健康診断を受けることや、気になる症状があれば早期に医療機関を受診することをお勧めします。

 

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